メカニックデザイナーの2つの意味 『大河原邦男展』に行ってきました
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北九州市で開催されている『メカニックデザイナー 大河原邦男展』に行ってきました。
場所は、北九州市漫画ミュージアム(毎週火曜休館)。以前、ラフォーレ原宿小倉店のあったビルです。
小倉駅の新幹線口を出ると…。
鉄郎とメーテル!
そして…。
ハーロック!
漫画家の松本零士さんと縁のある北九州市らしい演出でしょう。
個人的には、駅だけに「XYZ」と書かれた伝言板も設置してほしいです。原作では、伝言板が活用されている舞台は、東京の新宿駅ですけども…。(『CITY HUNTER』の作者の北条司さんは北九州市出身。)
さて、本題の『メカニックデザイナー 大河原邦男展』です。
大河原邦男(おおかわら くにお)さんの名前を知らない方でも、大河原邦男さんのデザインされた作品を知らない方は、ほとんどいらっしゃらないでしょう。
大河原邦男展で購入した図録の表紙です。『ヤッターワン』と『ガンダム』。
科学忍者ガッチャマンやタイムボカンシリーズ、ガンダムなどのアニメに登場する機械(メカ)をデザインされている偉大なデザイナーです。
大河原邦男さんデザインの作品は、本当に多すぎて、作品タイトルだけ羅列しても、2千文字近くになります。これらの作品の原画やコピーを、間近で堪能できるのが、『メカニックデザイナー 大河原邦男展』です。
私は、特に『機動戦士ガンダム』のMSV(モビルスーツバリエーション)シリーズ、『無敵ロボ トライダー G7』、『蒼き流星SPTレイズナー』の原画が見たくて、展示会に行ったのでしたが、懐かしの『オモロイド』の展示や、ドラえもんの映画シリーズのメカも担当していたことを知ったり、目当ての展示以外も大いに楽しめました。
特に驚いたのは、大河原さんがグリコのオマケのデザインもされていたこと。
たしかにプラモデル同様、金型成型のプロダクトなので、大河原さんに依頼があることは、十分に納得できるのですが、「寝る暇なんてあったのかな…?」と心配してしまうほどの売れっ子ぶりです。
言われてみると、昆虫型の乗り物なんて、大河原さんっぽいデザイン。数年前に、グリコのオマケが展示されている大阪の江崎記念館に行きましたが、そのときは気付きませんでした…。
数ある展示の中でも、個人的に圧巻だったのは、『機動戦士ガンダムF91』の展示です。
大河原邦男さんのデザイン案に、『機動戦士ガンダムF91』の監督である富野由悠季監督が、赤字で修正依頼をする作画がビフォーとして展示。
そして、その修正依頼に応えた最終デザインの作画がアフターとして展示されているのです。
この比較の作画が素晴らしい。「なぜ、大河原邦男さんばかりに、メカデザインの仕事が殺到するのか?」といった疑問が氷解する展示。
『仕事を発注する側の要求に応える能力』がずば抜けていると感じました。
ヒット曲を出した歌手が「ヒット曲ばかりリクエストされるのが嫌だった。」や、特撮ヒーロー作品に出演された役者が、「特撮ヒーローの役柄でいつまでも見られることが嫌だった。」という旨の発言を聞いたことがあるのですが、大河原さんは、こういったタイプと真逆だと思います。(そういった歌手や役者さんの意見や思いを否定する訳ではありません。仕事へのスタンスの違いです。)
もっと抽象的に表現すると、『アート』と『デザイン』の違いでしょう。
自分を『表現』するために絵を描くのではなく、発注する側のイメージを『再現』する職人なんだと思いました。そういった意味で、自分の思いや感情を出す人間でなく、オートマチックに、忠実に仕事を請け負う『機械』のように徹する『メカニックなデザイナー』だと。
『メカニックデザイナー』とは、大河原さんの職業を指す言葉だけでなく、大河原さん自身やポリシーを指す言葉でもあると感じました。